受託PMの転職ノート(仮)

受託PMの年収600万円は妥当か:案件規模・人数・残業で位置を確かめる

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年収600万円。受託のPMとして、要件定義からテストまで回して、この額です。これは妥当なのか、それとも低いのか。「受託 PM 年収 600万 妥当」と打って検索した人は、たぶん私と同じ所で手が止まっています。

私は43歳で、受託開発のPMを4年ほどしています(ITに戻ったときから、PMと開発を同時にしてきました)。持った案件は100万円から5,000万円まで。

経済産業省の調査にあるPMの平均(891.5万円、2017年公表)と比べれば、600万円は低く見えます。でも、手元の案件を4件並べてみると、金額の順と忙しさの順が合いませんでした。600万円が妥当かどうかは、金額だけでは決まらない。私は、案件の金額、関わる人の数、記録に出ない残業の3つを並べて、自分の位置を確かめることにしました。

この記事に出てくる数字は、どれも私1人の例です。

4件の案件を、金額の順に並べてみた

まず、持った案件のうち4件を表にしました。会社や顧客が分かる話は抜いて、金額・期間・人数・いちばん忙しかった時期だけを残しています。

案件の金額期間関わった人数いちばん忙しかった時期と理由
300万円(位置情報を使ったWebアプリ)3か月社内2人この案件だけなら忙しくなかった。ほかの案件との掛け持ちで、合わせると忙しかった
500万円(社内向けのEMS)4か月くらい社内2人+顧客のエンジニア2人要件定義。キックオフから2週間で形にする必要があった。ほかの業務と並行で、慢性的に忙しい
1,000万円8か月社内2人(設計・開発も自分)リリース前。後輩の実装に不具合が多く見つかり、その修正
5,000万円12か月社内5人+協力会社5人提案から要件定義に落とすとき。顧客との調整と説明資料の作成

300万円の案件は、それだけなら楽だった

300万円・3か月の案件は、社内2人で回しました。案件の中身だけを見れば、正直そこまで忙しくはなかったです。

ただ、私はこの案件だけを持っていたわけではありません。並行で別の案件を掛け持ちしていたので、合わせるとやっぱり忙しかった。

表の上では「300万円・3か月・2人」の小さな案件です。でも私の1か月は、この行1つでは表せませんでした。

私の場合、小さい案件はほかの案件との掛け持ちでした。年収600万円を「300万円の案件のPM」の値段として見るか、「何件も同時に回す人」の値段として見るかで、妥当かどうかの感じ方はずいぶん変わる気がします。

500万円の案件は、キックオフから2週間で要件定義だった

500万円の社内向けのEMSは、4か月くらいの案件でした。社内は2人。そこに顧客側のエンジニアが2人入りました。

この2人は開発の経験が浅く、一緒に開発しながら引き継ぎもしました。作りながら教える形です。これもほかの業務と並行だったので、ずっと慢性的に忙しかった。

いちばん忙しかったのは要件定義でした。キックオフから2週間で形にする必要があったんです。

金額は1,000万円の半分。それでも、顧客側の2人が加わって、作るだけでなく引き継ぐ仕事も増えると、時間はちゃんと取られます。

人が増えるほど、伝えるための仕事が増えた

1,000万円と5,000万円の案件では、もっとはっきりした場面がありました。1,000万円の案件では、リリース前の金曜日に後輩の実装の不具合が見つかり、夜や休日、早朝まで直すことになりました。5,000万円の案件では、提案が実際のシステムと合っていなくて、説明資料を10回を超えて作り直してから、ようやく要件定義に入れました。

2件に共通していたのは、私と誰かの間で、伝えることが詰まっていたことです。

私が楽だったのは、一人で全部を通してやれた仕事でした。頭の中にあるだけのことを人に伝える手間も、伝えるための資料を作る手間もないからです。逆に、社内、協力会社、顧客側の運用保守やシステムの担当と、関わる人が増えるほど大変になりました。表で言えば、社内5人と協力会社5人がいた5,000万円の案件がそれです。

忙しさを作っていたのは、金額よりも人の数でした。

だから、自分の600万円を見るときも、「何円の案件を持ったか」と並べて、「何人の間に立ったか」を見ることにしました。

記録は月20時間、でも実際はその倍以上

私の残業は、記録上は月20時間ぐらいにしています。でも、それ以外の時間にも作業しているので、実質は毎月40〜60時間くらいになっていると思います。朝3時ごろから動く生活で、5歳の子どもには「パパはいっつも隙さえあればパソコンの前にいっちゃうんだから」と言われています。

20時間の残業に対する600万円なのか、40〜60時間に対する600万円なのか。同じ年収でも、記録の時間で見るか実際の時間で見るかで、妥当かどうかの答えは変わってきます。求人票の年収と残業時間を見比べるときも、自分の数字は「実際のほう」で持っておくのがいいかな、と思います。そうしないと、比べる土台がずれてしまうので。

公的なデータの中で、600万円はどこにいるのか

では、世の中の数字と比べるとどうなのか。

少し古い調査ですが、経済産業省が2017年に公表した「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」(労働新聞の記事による)では、プロジェクトマネージャの平均年収は891.5万円、顧客向けのシステムの開発・実装をするSE・プログラマは593.7万円でした。

この数字だけを見ると、600万円はPMの平均よりかなり下に見えます。ただ、私は数字をそのまま横に並べる前に、3つ確かめることにしました。

1つめは、職業の括りです。「PM」と一口に言っても、5,000万円の案件で協力会社を含む10人を回す人も、1,000万円の案件で設計から開発まで自分でする人も、同じ括りに入ります。私の4件にも、その両方がありました。

2つめは、平均の中身です。平均には大きい案件のPMも入っています。私の表で、関わる人が10人の案件は1件だけでした。

3つめは、時間です。公的なデータの年収が何時間の労働に対する数字なのかと、自分の「記録20時間・実際40〜60時間」を、同じ物差しでそろえて比べます。

3つを並べてみて、正直に言うと、600万円が相場より高いのか低いのかは、まだなんとも言えません。比べる相場が、自分の働き方に合う形で見つからないからです。ただ、年収そのものには満足しています。

年収を下げれば、楽になるのか

年収を下げてでも、残業の少ない所に移りたい。ここまで並べると、そう考える人もいると思います。

正直、私は家庭があるので、年収を下げてもいいとは思えません。共働きで、子どもの送り迎えもある。今はほぼリモートで働けているので、転職してリモートができなくなったら困ります。

それに、私の4件を見るかぎり、忙しさは金額より、関わる人の数と掛け持ちで決まっていました。年収が下がっても、人の間に立つ仕事と掛け持ちが同じなら、忙しさはあまり変わらないかもしれない。下げるかどうかの前に、次の職場で何人の間に立つのか、何件持つのかを確かめるのがいいかな、と思っています。

まだ確かめていないこと

転職の市場で、私の4件の経験がいくらに見えるのかは、まだ確かめていません。

これから、IT専門の転職エージェントに登録して、面談を受けるつもりです。聞きたいのは、300万円や500万円の小さな案件を掛け持ちしてきた経験がどう見られるかと、記録20時間・実際40〜60時間という働き方を伝えたときに出てくる求人です。

PMのスカウトばかり届いて、その数で自分の値段を測ろうとしている人もいると思います。では、届いたスカウトの中身はどう見分ければいいのか。

私の600万円は、金額だけで見れば平均より下に見えます。ただ、同じ600万円の裏には、何人の間に立ったかと、記録に出ない40〜60時間がありました。

あなたの案件も、金額・人数・実際の残業の3列で1枚に並べてみてください。残業の列は、記録の時間ではなく、実際の時間で。