受託PMは年収を下げて残業を減らせるか:案件規模と忙しさの実例
記録上の残業は、月20時間くらい。でも実際は、毎月40〜60時間は残業している気がします。
年収を下げてもいいから、もう少し楽に働きたい。受託でPMをしていると、一度はそう思いますよね。ただ私は、家庭があるので、正直、年収を下げてもいいとは思えません。
私は受託開発のPMをしている43歳で、年収は600万円です。100万〜5,000万円の案件を、1〜10人のチームで回してきました。その中で、忙しさは案件の金額では決まりませんでした。きつかったのは、関わる人が多い案件と、自分の頭の中にあるものを人に渡さないといけない案件です。
だから「年収を下げれば楽になるのか」と聞かれたら、私の場合は「下げるだけでは変わらない気がします」と答えます。
ここに書く数字や場面は、すべて私1人の例です。
では、何が忙しさを作っていたのか。
金曜日に、足りない機能が見つかった
1,000万円・8か月の案件でした。チームは社内の2名だけ。私がPMをしながら、設計と開発もしていました。
残業がいちばん多かったのは、リリースの前です。実際にアプリケーションを動かしてみたら、足りない機能に気がつきました。顧客からの問い合わせで気づいたものもあります。後輩が作っていた部分に、不具合がたくさん見つかりました。
それが分かったのは、もう金曜日でした。
そこからの修正は、夜遅くまで。休みの日も、子どもの相手をしながらPCで作業を続けました。私は朝3時ごろから動いて夜は9時に寝る生活なので、家族が起きる前の時間にも作業していました。
いちばん時間を取られたのは、直すことよりも伝えることでした。後輩に指摘したことを伝えても、何をどう直すかをはっきり言わないと、正しく伝わらないんですよね。明後日の方向に直されて、手戻りが増えました。込み入った修正は、結局自分の手でやることになりました。
2人だけの小さなチームでも、楽ではありませんでした。人数が少なくても、人に渡すところで詰まれば忙しくなります。
「こんなの無理だよ」と、全員で言った日
もう1つは、5,000万円・12か月の案件です。社内5名と協力会社5名のチームでした。フェーズが3つに切られていて、私はPMとして要件定義からテストまでを担当しました。
提案は、別の人が担当していました。その人は、AIでコードや資料を調べた結果を、そのまま提案に使っていたんです。それが、実際のシステムや運用の要件と合っていませんでした。
事前調査の段階でそれが分かり、メンバー全員で「こんなの無理だよ」となりました。
そこから、調べた中身をもとに説明資料を作りました。顧客との間でハレーションを起こさずに、どこを落としどころにするか。顧客は最初、「え、じゃあ支払っている金額に対してどうなるの」と、費用のことを気にしていました。代わりの案を出して、提案のとおりに進めるとかえって複雑になり、トラブルの原因になると伝えました。最後は、しぶしぶ合意してもらった形です。
説明資料は、10回以上作り直しました。レビューは、社内、協力会社、そのあと顧客の順でした。
この案件で時間がかかったのは、作ることではなく、合意を取ることでした。関わる人が多いほど、1枚の資料が通る関門も増えていきます。
一人で全部やった案件は、なぜ楽だったのか
逆に、いちばん楽だったのは、一人で最初から最後までやった案件です。
顧客から言われたことの認識をすり合わせたら、作るものは自分で分かっています。頭の中にしかないことを人に説明する難しさがありません。説明のための資料を作る手間もかからない。1,000万円の案件で、後輩の修正に追われたようなことも起きません。顧客とのやりとりも含めて自分の中で完結するので、コントロールできるんです。
並べてみたら、金額と忙しさは比例していなかった
持った案件を、金額・人数・忙しかった時期で並べるとこうなります。
| 案件の金額 | 期間 | チーム | 私の役割 | 忙しかった時期と理由 |
|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 3か月 | 社内2名 | PM、設計、開発 | この案件だけなら忙しくなかった。ほかの案件との掛け持ちで、合わせると忙しかった |
| 500万円 | 4か月くらい | 社内2名+顧客のエンジニア2名 | PM(一緒に開発しながら引き継ぎ) | 要件定義。キックオフから2週間で形にする必要があった |
| 1,000万円 | 8か月 | 社内2名 | PM、設計、開発 | リリース前。後輩の実装の不具合の修正 |
| 5,000万円 | 12か月 | 社内5名+協力会社5名 | PM(要件定義〜テスト) | 提案から要件定義に落とすとき。顧客との調整と説明資料 |
5,000万円の案件は、たしかに大変でした。でも、5分の1の金額だった1,000万円の案件でも、金曜に分かった修正が、休みの日まで続いています。300万円の案件は、それだけなら忙しくなかった。忙しかったのは、ほかの案件と掛け持ちしていたからです。そして、いちばん楽だったのは一人でやった案件でした。
私の場合、忙しさを左右したのは金額より、関わる人の数と、掛け持ちの数、自分の頭の中のことを誰かに渡す回数でした。
そう考えると、「年収を下げて、小さな案件の会社に移れば楽になる」とは、私には思えません。逆に、年収が同じでも、関わる人が少なくて自分で完結できる仕事なら、忙しさは変わるのかもしれません。
では、そもそも年収600万円は、案件の規模や人数から見て低いのか。
受託PMの年収600万円は妥当か:案件規模・人数・残業で位置を確かめる
受託PMの年収600万円は妥当なのか。43歳で受託のPMをしている運営者が、300万〜5,000万円の4件の案件を表にして、案件の金額・関わる人の数・記録に出ない残業の3つから、自分の位置を確かめた記録です。
5歳の子に言われたこと
記録上の残業が20時間で、実際は40〜60時間。朝が早いので、その時間に仕事をすることが多いんです。
5歳の子どもには、「パパはいっつも隙さえあればパソコンの前にいっちゃうんだから。もっと私に構ってよね」みたいなことを言われます。
それでも、年収は下げられません。共働きで、子どもの送り迎えもあります。今はほぼリモートで働けているので、転職してリモートができなくなると、それはそれで困ります。
年収を下げたくない。でも忙しさは減らしたい。私が次の職場を考えるなら、見たいのは年収の数字よりも、関わる人の数と、リモートで働けるかどうかです。
「転職しようかな」と思ったのは、仕事の偏りを感じたとき
社員の中で、私は複数の案件を掛け持ちしていて、全体の案件の多くをこなしています。一方で、指示を待っているメンバーは時間が余っている。これなら一人で開業して、その人たちの分まで働いている分の利益をもらわないとおかしいかな、と思うこともあります。会社として、そういうメンバーの稼働も何かで埋めないといけません。自分の作業以外に、会社の体裁を保つための本末転倒な作業も多いんです。
迷っているのは、自分が抜けたあとに今の職場が回るのか、迷惑をかけないか、ということです。どこに行っても、やっていける自信はあります。私はわりとコミュニケーションが取れるほうなので。
私は、採用面接をする側に座ったこともあります。まず見ていたのは、コミュニケーション。それから、言われたことしかしないのか、自分から動ける人なのか。スタートアップだったので、指示を待つ人だとPMや上司が大変になるからです。技術は、AIもあるので、そこまで重視していませんでした。
ただ、面接だけで分かることは少ないです。面接では「職業訓練でチームリーダーとしてみんなを引っ張っていた」と話していた人が、入ってみたら指示待ちだったこともありました。面接で見られるのは、人柄と実績くらいかなと思っています。
小さな案件のPM経験は評価されるのか、と不安な人もいると思います。面接する側だった私が見ていたのは、自分から動ける人かどうかでした。上の表の「忙しかった時期と理由」は、まさにそこを話す材料になる気がします。
では、PMのスカウトばかり届くとき、また調整ばかりの仕事に戻るしかないのか。
これから面談で確かめたいこと
転職エージェントの面談は、まだ受けていません。これから受けます。
確かめたいのは、年収を下げなくても、関わる人の数やリモートの条件で今より合う仕事があるのか。そして、小〜中規模の受託のPM経験が、外からどう見えるのかです。
今も、朝3時ごろに起きてPCの前に座る生活です。年収を下げれば、この時間が減るのか。私の表を見る限り、それだけでは減らない気がします。あなたがこれまで持った案件も、金額ではなく、関わった人の数と、人に渡した回数で並べてみてください。どこで忙しくなっていたのかが、見えてくると思います。